■Scene.02. マブ神祭 -前夜祭- ■
【 異変 】
一生懸命つくったリュックを抱きしめ、ユンはここ数日間のことを思い返していた。

元気に川を泳ぐ、魚の親子。
眠気を誘う、森の木漏れ日。
頬を撫でる、優しい風――。

まだ何一つとして思い出すことはできなかったが、それらは彼の心に新鮮な感動を与えていた。

(今日は何をしよう?)
(明日はドコへ行こう?)

ユンの期待はどんどん膨れ上がっていく。

(よし!
今日は海を見に行ってみよう!)

オリアクスがギルドメンバーに指導している隙を見計らい、ユンは再び外へと飛び出した。

ミーリム海岸で潮風に吹かれていたユンは、自分を呼ぶ声に振り向いた。
どうやら、オリアクスがユンを連れ戻すために差し向けた、冒険者らしい。

記憶のカケラを見つけられずにいるユンは、自分が作ったリュックをそっと差し出した。

「もう少し、お外にいたいんだ…。
これをあげるから、オリアクス兄ちゃんにはナイショにしてくれないかな?」

ゾウの形をした、つぎはぎだらけのリュックサック。

愛くるしいその瞳に見つめられ、冒険者達は困ったように顔を見合わせた。

「あ…あれ? なんだろう…頭…クラクラする…っ…」

突然の頭痛にふらつくユン。

――そして、その直後。

「な、なんだコイツら! アッチ行けよっ! お…お兄ちゃん、お姉ちゃん、助けて!」

腐敗した体で近付いてくる魔物に怯え、ユンは冒険者たちの背後でうずくまった。

勇敢な冒険者たちに助けられ、ユンはようやく顔をあげる。
頭の痛みは、いつの間にか消えてなくなっていた。
「お兄ちゃん、お姉ちゃんありがとう…ケガしなかった?
ココは危険みたいだから、どこか別のところに行ってみるね

」 しかし、その次に訪れた場所でも、また、その次の場所でも……

それらはまるでユンを追ってきたかのように、姿を現すのだった。

【 マブ神祭 -前夜祭- 】
――その日。

ムトゥーム地下墓地では、教祖イーゴ(Igo)の命により、マブ神祭の準備がすすめられていた。

マブ教徒たちは、禁断のレシピとして封じられていた暗黒料理の一つ
――「レッド スープ」の解放に歓声をあげ、つぎつぎと生贄を血祭りにあげてゆく。

祭へ向けて、闇の力は日増しに高まって行くばかり…。

ミーリム海岸と、ネオク高原では、漆黒の闇に紛れ、腐り果てた闇の生物たちがうろつき回るようになり、

更にその翌日には、アルビーズの森とレクスール・ヒルズも、同じ現象にみまわれた。

ダイアロス各地で相次ぎ起こる不可解な現象を人々が噂し始めた頃、その異変がただならぬ悪意を帯びていることを敏感に察知した者達がいた。

ラル・ファク神に信仰を捧げる、アルケミスト・ギルドの長、ルーチェ。
エルガディンの民を率いる、キング オラージュ。
アルビーズの森でフォレスター達を束ねるウォルフガング。

3人はそれぞれの立場から、みなに警戒を呼びかけた。

ダイアロス全土が不穏な空気に包まれる中、 ユンは不可解な現象に怯えながらも、記憶を取り戻すため外出を繰り返した。

そして、その度に闇の生物が彼を取り囲むのだった。

(なんだろう、気持ち悪いよ……)

ユンの瞳が、未知の恐怖に揺れ動いた。

■この時進行していたイベント内容■
【 マブ神祭 - 前夜祭 】

教祖イーゴ(Igo)より、マブ神祭を執り行うよう仰せつかったオリアクス。
その準備のため、前夜祭が開催されることになりました。

祭りに向け、マブ教徒たちは供物――「レッド スープ」作りに励みます。

一方、血の匂いに誘われた闇の生き物たちが、各地に姿を現し始めているようです。

【 ユンを探せ! 】

オリアクスがアルビーズの森で発見し、ムトゥームへと連れてきた少年――ユン。
記憶を失くしているユンは、その断片を探すために、ムトゥームをたびたび抜け出します。

彼がムトゥームを離れると、オリアクスから皆さんへ「ユンを探して欲しい」というお願いがなされます。
あなたは、各地を転々とするユンを見つけることができるでしょうか……?

・ オリアクスのアナウンスが流れたら、各地に現れるユンを探します。
・ ユンを見つけたら、【ユン】と【見つけた】という言葉を、【ユンの目の前(Say)】で伝えてください。