■Scene.06. 混沌の地へ■
【 回想 】
オリアクスは、ユンを守れなかったことを悔いていた。
歯車が狂い始めたのは、いつ頃からだった?
オリアクスは記憶をたどる。
(――そう、マブ神祭。
あの頃から、坊主の様子がおかしくなった。)
何者かに怯え、思い悩んでいた。
しかしオリアクスは、祭のことで忙しく、彼に構っている余裕がなかった。
加えて、暗使の一員となるならば、1人で解決してみせろという思いも多分にあった。
だがそれは恐らく、ユンの手に負えることではなかったのだ。
(あの頃から、坊主の笑った顔を見なくなったな…)
アルビーズの森で拾ったとき、恐る恐る……でも、しっかりと手を握ってきたユン。
いつか兄ちゃんにも作ってあげるね!
つぎはぎだらけのリュックを、得意げに見せたユン。
説教をするたび、真剣な表情で聞き入っていたユン。
…いつの間にか、そんな毎日を新鮮に思っていた自分がいる。
(祭は仕組まれていたとしても、坊主との出会いは偶然だった。
…そう思いたいもんだな)
ユンがChaos Age で果たさねばならないこととは何か――?
曇天を見上げ、オリアクスは口を一文字に引き結んだ。
アルビーズの風は、冷たい。
一方、ルーチェもまた、心に沈んだ澱を感じ取っていた。
ラスレオ大聖堂にユンを迎え入れた時のことが、脳裏に浮かび上がってくる。
酷く疲れた表情に、くたびれた衣服…そして、強い怯えを宿した無垢な瞳――。
魔物に追われていると聞き、ルーチェは胸が痛んだ。
一体、どれだけの恐怖を味わい逃げつづけたのだろうか。
少年が放つ、聖とも邪とも付かない雰囲気に気付きながらも、ルーチェは彼を保護した。
追い返すことができないくらい、ユンは弱っていたのだ。
(迷える子羊を、救うことができませんでしたね…)
傍にいた者だからこそ感じるやり場の無い悲しみが、ルーチェの心をいっぱいに満たしていた。
【 誰がための旅立ち 】
――翌日の晩。
オリアクスは暗使ギルドの面々を呼び集めた。
そして、Chaos Age へ向かうことを、皆の前で宣言する。
「お前たちには、正直に話しておこう。
…俺はユンを連れ戻すつもりだ。
あの坊主が、Chaos Age で何をしているのか?
それは、わからん。
マブ神祭を行ってまで、送り返さなければならなかった理由とは?
それも、わからん」
周囲は静まりかえっている。
「だから、俺はその答えをこの目で確かめに行く。
そして、ユンが助けを必要とするのならば、手を貸そう。
ヤツは未来のマブ教徒、未来の暗使。
…独り、闇の底に捨ておくわけにはいかん。
それが、暗使ギルドを担う、俺の役目だ」
反論する者はなかった。
1度こうと決めたら、テコでも動かない彼の性格を知っていたからだ。
「しばらくの間、留守を頼む」
そう言い残し、オリアクスは地下墓地を後にした。
――オリアクスがChaos Age へ向かったことを聞き知ったルーチェは、見透かしていたかのように小さく微笑んだ。
「迷える子羊のことを、案じていたのでしょう。
信徒を想うその気持ち…私にも理解できます」
報告をくれたアルケィナのメンバーにそう告げると、身支度を始める。
「…私も、あとを追う事にいたしました。
ユンを連れ戻す、手助けをしたいと思います」
信徒たちが彼女の身を案じて次々と集まってくる。
いずれも、ユンを助けようと使者との戦いに身を投じた者たちばかりであった。
「ユンが、ラスレオ大聖堂へと逃げ込んで来たあの日…、彼から聖とも邪ともとれない、不思議な気配を感じました。
…ですが、彼は自らのそれに怯え、悩み、苦しんでいたようです。
…イヤだ、コワイと泣き喚いていた声が、表情が、幾度もよみがえって来ます。
あんなにも嫌がっていたというのに、救いの手を差し伸べることができませんでしたね…」
みな、真剣な表情で聞き入っている。
「…ミスト様も、ユンのことは元より Chaos Age で何が起こるのかを、懸念されているご様子でした。
危険な旅になるかもしれません。
皆さまには、ギルドのことをお願いします」
共にChaos Age へ行くと、言い出さんばかりだった面々は、ルーチェの真剣な表情を見て、押し黙った。
…そして、彼女の旅立ちを黙って見送ったのである。
オリアクスとルーチェ。
2人は、Present Age から姿を消した。
深い闇の底に囚われたユンを、助け出すために…。
■この時進行していたイベント内容■
【 混沌の地へ 】
混沌の扉の向こうへ消えたユンを助けるため、オリアクスとルーチェがギルドを後にしました。
[暗使]と[アルケィナ]では、留守を任された新しいマスターがギルドを切り盛りしています。
――オリアクスとルーチェは、深い闇の奥底からユンを救い出すことができるのでしょうか?
・ 新しいギルド・マスターを訪ねてみましょう。
[暗使] Equa / [アルケィナ] Fresa
【 回想 】
オリアクスは、ユンを守れなかったことを悔いていた。
歯車が狂い始めたのは、いつ頃からだった?
オリアクスは記憶をたどる。
(――そう、マブ神祭。
あの頃から、坊主の様子がおかしくなった。)
何者かに怯え、思い悩んでいた。
しかしオリアクスは、祭のことで忙しく、彼に構っている余裕がなかった。
加えて、暗使の一員となるならば、1人で解決してみせろという思いも多分にあった。
だがそれは恐らく、ユンの手に負えることではなかったのだ。
(あの頃から、坊主の笑った顔を見なくなったな…)
アルビーズの森で拾ったとき、恐る恐る……でも、しっかりと手を握ってきたユン。
いつか兄ちゃんにも作ってあげるね!
つぎはぎだらけのリュックを、得意げに見せたユン。
説教をするたび、真剣な表情で聞き入っていたユン。
…いつの間にか、そんな毎日を新鮮に思っていた自分がいる。
(祭は仕組まれていたとしても、坊主との出会いは偶然だった。
…そう思いたいもんだな)
ユンがChaos Age で果たさねばならないこととは何か――?
曇天を見上げ、オリアクスは口を一文字に引き結んだ。
アルビーズの風は、冷たい。
一方、ルーチェもまた、心に沈んだ澱を感じ取っていた。
ラスレオ大聖堂にユンを迎え入れた時のことが、脳裏に浮かび上がってくる。
酷く疲れた表情に、くたびれた衣服…そして、強い怯えを宿した無垢な瞳――。
魔物に追われていると聞き、ルーチェは胸が痛んだ。
一体、どれだけの恐怖を味わい逃げつづけたのだろうか。
少年が放つ、聖とも邪とも付かない雰囲気に気付きながらも、ルーチェは彼を保護した。
追い返すことができないくらい、ユンは弱っていたのだ。
(迷える子羊を、救うことができませんでしたね…)
傍にいた者だからこそ感じるやり場の無い悲しみが、ルーチェの心をいっぱいに満たしていた。
【 誰がための旅立ち 】
――翌日の晩。
オリアクスは暗使ギルドの面々を呼び集めた。
そして、Chaos Age へ向かうことを、皆の前で宣言する。
「お前たちには、正直に話しておこう。
…俺はユンを連れ戻すつもりだ。
あの坊主が、Chaos Age で何をしているのか?
それは、わからん。
マブ神祭を行ってまで、送り返さなければならなかった理由とは?
それも、わからん」
周囲は静まりかえっている。
「だから、俺はその答えをこの目で確かめに行く。
そして、ユンが助けを必要とするのならば、手を貸そう。
ヤツは未来のマブ教徒、未来の暗使。
…独り、闇の底に捨ておくわけにはいかん。
それが、暗使ギルドを担う、俺の役目だ」
反論する者はなかった。
1度こうと決めたら、テコでも動かない彼の性格を知っていたからだ。
「しばらくの間、留守を頼む」
そう言い残し、オリアクスは地下墓地を後にした。
――オリアクスがChaos Age へ向かったことを聞き知ったルーチェは、見透かしていたかのように小さく微笑んだ。
「迷える子羊のことを、案じていたのでしょう。
信徒を想うその気持ち…私にも理解できます」
報告をくれたアルケィナのメンバーにそう告げると、身支度を始める。
「…私も、あとを追う事にいたしました。
ユンを連れ戻す、手助けをしたいと思います」
信徒たちが彼女の身を案じて次々と集まってくる。
いずれも、ユンを助けようと使者との戦いに身を投じた者たちばかりであった。
「ユンが、ラスレオ大聖堂へと逃げ込んで来たあの日…、彼から聖とも邪ともとれない、不思議な気配を感じました。
…ですが、彼は自らのそれに怯え、悩み、苦しんでいたようです。
…イヤだ、コワイと泣き喚いていた声が、表情が、幾度もよみがえって来ます。
あんなにも嫌がっていたというのに、救いの手を差し伸べることができませんでしたね…」
みな、真剣な表情で聞き入っている。
「…ミスト様も、ユンのことは元より Chaos Age で何が起こるのかを、懸念されているご様子でした。
危険な旅になるかもしれません。
皆さまには、ギルドのことをお願いします」
共にChaos Age へ行くと、言い出さんばかりだった面々は、ルーチェの真剣な表情を見て、押し黙った。
…そして、彼女の旅立ちを黙って見送ったのである。
オリアクスとルーチェ。
2人は、Present Age から姿を消した。
深い闇の底に囚われたユンを、助け出すために…。
■この時進行していたイベント内容■
【 混沌の地へ 】
混沌の扉の向こうへ消えたユンを助けるため、オリアクスとルーチェがギルドを後にしました。
[暗使]と[アルケィナ]では、留守を任された新しいマスターがギルドを切り盛りしています。
――オリアクスとルーチェは、深い闇の奥底からユンを救い出すことができるのでしょうか?
・ 新しいギルド・マスターを訪ねてみましょう。
[暗使] Equa / [アルケィナ] Fresa