第一章


古代エルアン人の残した遺跡、「 火竜神殿 」。
その場所に冒険者達が足を踏み入れたとき、同時に臨まぬ力も復活を果たしていた。
神殿と共に封印されていた、古代エルアンを滅びに導いた「ザハーク」の復活である。
ザハークは己の野望を果たそうと、ダイアロス全土を巻き込む厄災を起こすが、
一人のエルアンの少女と勇気ある冒険者達により、その脅威は打ち払われた。

ザハークは野望の遂行と失敗で全ての力を失い、存在すらも消えかけていた。
ただ消滅を待つ状態だったザハークは、考えるのをやめようとしていた…。
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ザハーク
「我が主の命により、お迎えに上がりましたザハーク殿。」
「お…まえ…は…… そう…か… イー…ゴの…」

消え行くザハークの前に立つイーゴからの使い。
それは今回の事件で、イーゴからの監視も兼ねて暗躍していた男の姿だった。
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ザハーク
「はい。イーゴ様は貴方に、いや貴方とその失われた技術に興味があるようです。

このまま、時の流れから消してしまうのは惜しい。そう仰っております。」

「くはははは…… わかりやすいな… そうか… この技術が欲しいか…」

ザハークは、今持てる全ての力を奮い、力強くイーゴの使いと対峙し口を開いた。
ザハーク


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「邪魔をするかと思えば、我が野望の手助けまでしたお前だ… 裏があることはわかっていたが…

望みがわかれば…簡単だ。 私も動きやすくなる…。
元より消滅しか残されていない我が身… 私も自身の野望のため、貴様を利用してやろう。」

「フフ、ありがとうございます。そうです、貴方は我々を存分に利用するといいでしょう。

今は互いの利益のため… 協力し合いましょう。
さぁ、イーゴ様がお待ちです。しばらくはお付き合いください。」


イーゴの使いは時の石の欠片を取り出し、ザハークの精神体を迎え入れた。
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「多少窮屈かもしれませんが、消え行く力を抑える事ができるでしょう。

力を蓄えた後は、お好きな身体をお探しください。では、行きましょう。」


イーゴの使いとザハークは光に包まれ、時の流れの中に姿を消した ──

火竜神殿から始まり、ダイアロスを襲った動乱から数ヶ月 ───
各地では、ダイアロスを揺るがす事態が、再び起きようとしていた…
エルアン宮殿は、賢王の時間凍結の封印術により、時の流れから切り離された状態となっていた。
古代エルアンの全てが詰まった場所。かつては賢王が、そしてザハークも研究に詰めていた場所である。
ザハークは感じていた…
賢王が治めていたこのエルアン宮殿の復活こそが、己の野望を実現させるための最後の砦となると。

賢王の施した時間凍結の封印解除は容易ではない。
各地の原初(マナ)の集約点で、マナの力を増幅させ、力のバランスを乱すことで
固定化された時間空間を、再び動かすという方法が必要となる。
しかし今のザハークには、各地に拡がる集約点において、力のバランスを乱すほどの
マナを増幅させられる術は持っていない。
これは考えうる最後の手段であり、最後の賭けとなるだろう。

ザハーク





イーゴ
「イーゴよ… 貴様に頼みたいことがある…

エルアンの力… 貴様の欲しがる知識は、ヴァルグリンドの巣穴の先にある。
賢王の手により封印された、禁断の地だ。
貴様には無理だろうが、私にはその封印を解く術がある。
しかし、ヴァルグリンドに棲み付く多くの雑念は、私の手ではどうにもならない。
貴様には、その雑念を払ってもらいたい。」

「よかろう。 たやすい事だ…」

イーゴは多くは語らず、ただザハークの要求を受け入れた。
その数日後、ヴァルグリンドの巣穴には不気味な静寂に包まれたのだった。

レクスール・ヒルズから帰った一人の旅人から、アルケィナギルドへ不思議な報告が届けられた。
「ヴァルグリンドの巣穴から、アマゾネス達の姿が消えている…」と。

PresentAge 城下町ビスク ラスレオ大聖堂 ───
ノア・ストーンを制御するため、錬金術の発展のために、古代遺跡の調査を進めるアルケィナギルドの本部。
その日、ミストの下に届いたひとつの情報は、久しく進展の無かった古代文明の調査において
大きな動きを見せる情報となった。
ミスト

アルフレッド




ミスト

アルフレッド


ルーチェ

アルフレッド


ミスト



ルーチェ



ミスト





アルフレッド
ミスト

アルフレッド
「アルフレッド。古代遺跡の調査に、進展があったとの報告を受けていますが

どのような情報ですか?」

「ミスト様。そして同志ルーチェ。

以前より調査を進めておりました、スルト鉱山の火竜神殿にて発見された
ひとつの古文書の解読から、 古代エルアン時代最大の遺跡『エルアン宮殿』の存在が
明らかになりました。
エルアン宮殿は、ヴァルグリンドの巣穴の奥地に在ります。」

「それは大発見です。 しかし、ヴァルグリンドの巣穴ですか…

他に、なにか情報は? これだけではないのでしょう?」

「はい。古文書によりますと、エルアン宮殿はその時代においての危機に際して

賢王自らが施した『時間凍結』の封印術によって、時の流れから切り離されたと
記されておりました。」

「時間凍結… とすると、私達が立ち入るには少々無理があるのではないでしょうか。

時の流れに生きる者は、干渉することもできませんわ。」

「現在アルケィナが用いる技術では、難しいでしょう…

しかし、そこにはノア・ストーンを制御する事ができるほどの
膨大な知識が溢れているはずです。 このまま、指をくわえたままでいるのは実に惜しい…。」

「確かに、そうではありましょうが。

エルアンの危機に、賢王自身が掛けたという封印術…
そして今回のアマゾネスが消えた異変… 何か関係があるように思われます…
もしかすると我々は、エルアンの復活を願うことすら、許されないのではないでしょうか……」

「確かにエルアンには、私たちには考える事もできないような

素晴らしい技術が眠っていることでしょう。 しかし今回の件に、以前起こった火竜神殿に始まる厄災のこともありますわ…
あれは、かつての古代遺跡をむやみに目覚めさせた、代償だと思われます。」

「そうですね…

己の力を過信したが故に、大きな火傷をしてしまうこともあります。
前回は多くの冒険者と、遺跡に眠る古代の巫女の助けもあり、厄災を防ぐことができました。
………
ルーチェの言うとおり… 今我々が出来ることの中で研究を進めることが
過ちを起こさない、最善の一手かもしれません。」

「了解いたしました。 …しかし、危険を恐れて逃げてばかりでは、技術の進歩は望めませんぞ。」
「それも承知しています。 今のエルアン宮殿についての話も、まだ憶測でしかありません。

アルフレッド… エルアンについては、もう少し調査を進めてください。」

「はい。では、調査を続けさせていただきます。

数日いただければ、さらに詳細な情報をお知らせできると思います。
時間凍結の封印術についても、詳しく調べてみます。
ラル・ファク、イル・ファッシーナ。」


アルケィナギルドの研究員アルフレッドは、大聖堂にある多くの文献と
エルアンの記述が見つかった古文書を調べていた。
アルフレッド
「『時間凍結』… エルアンの賢王は、なぜそのような封印術を使い

エルアンの本拠地である宮殿を時の流れより切り離したのか。」


古文書と文献から調べられた情報によれば「宮殿に対し、亜人による襲撃が行われた」ということが確認された。
アルフレッド
「亜人。 イクシオン族やタルタロッサ族とは違う存在だろうか。

果たしてその襲撃は、宮殿そのものを、封じなければならないほどのものだったのだろうか。
ミスト様の言うとおり、我々が手を触れてはいけないものなのか…」


このようなエルアンに関する情報は見つかるが、封印術とはどのようなものなのか
その手がかりは全く得られないままでいた。

不意に蝋燭に照らされた大聖堂の暗闇の中、アルフレッドの背後に、低く重苦しい声が響いた。
ザハーク
アルフレッド
ザハーク
「人間よ… エルアンの知識が欲しいか……?」
「!!?」
「エルアンの知識が欲しいか、人間…

私は戻りたいのだ……
かつての栄光、私の全ての研究が詰まったあの場所…
私はどうすれば戻れるか探っていた…
君の探究心は素晴らしい… だがそれでも宮殿には辿り着けまい…
力を貸そう… そして力を借りよう…
君は十分働いた… 後は私に任せよ…」


火竜神殿での戦いにより、全ての力を失ったザハーク…
エルアン宮殿復活に使える力は、彼にはもう残されていない。
力を失った彼は、現在のダイアロスに生きる人間達を利用する事にした。
人間のあくなき探究心、そして自分を消滅寸前にまで追いやった団結力を。
ザハーク
「しばらく君の身体を利用させてもらうぞ…」

静かな朝を迎えたその日、エルアン宮殿と、その封印術についての情報が、アルフレッドの口より告げられた。
アルフレッド

ルーチェ
ミスト
アルフレッド


ミスト
アルフレッド
ルーチェ
アルフレッド




ミスト


アルフレッド



ミスト

ルーチェ
アルフレッド
ミスト
「ミスト様。同志ルーチェ。

調査を進めておりましたエルアン宮殿について、早急な対処が必要となりました。」

「あなた様?それはいったいどういうことです。」
「詳しい説明をしていただけますか。」
「はい。 エルアン宮殿には、確かに多くの知識が存在しています。

しかしそこには、エルアンを崩壊に導いた元凶も存在しているのです。
賢王は、それを内部に留め、世界に広がらぬよう、時の秘術である時間凍結を施したのです。」

「そこに封印の意図があったというわけですか。」
「そのようです。そして今その封印術が解かれようとしています。」
「なんですって!?」
「火竜神殿の復活により、エルビン方面での原初(マナ)の力が溢れ

ダイアロス全体のマナのバランスが、大きく乱れた状態となっています。
時間凍結は、大地全体のマナの力を利用して施された秘術です。
現状の、マナが大きく乱れた状態が続く事があれば
鎖に繋がれたエルアン宮殿が、時の流れに解放される日が近いというわけです。」

「………

そしてあなたが、早急な対処が必要だと告げたことを考えると
解放を阻止する術がある、というわけですね。」

「各地のマナの乱れが、時の解放へと進ませているのであれば

乱れたマナを、大きな奔流としてダイアロス中に流し、正常な流れを作り出します。
大河の様に流れるマナは、原初の力を安定させ、時の秘術を正常化させるでしょう。
古文書に記された装置『ノア バランサー』を利用する事で、それを実現させる事が可能です。」

「そういうことですか。 素晴らしいですね、アルフレッド。

この短い時間の中、よくここまで…」

「では、まずはその『ノア バランサー』を用意するところから、始めないといけませんわね。」
「製作に必要な物、そして設置場所などはお知らせします。」
「ありがとうございます、アルフレッド。

では、早速準備に取り掛かりましょう。 ラル・ファク、イル・ファッシーナ。」


アルフレッドの情報を受け、アルケィナギルドでは即座に緊急対応班が編制された。
アルフレッド
ルーチェ
アルフレッド



ルーチェ
アルフレッド




ルーチェ
「同志ルーチェ。 『ノア バランサー』の設置箇所の選定は終了しました。」
「あなた様の、素早い対応には感謝いたします。」
「作業の流れとしては、エルアン宮殿とヴァルグリンドの巣穴にある『時の接合点』に

流れるマナの受け皿として基点となる『ノア ポイント』を設置します。
その後、実際にマナを流すために、各地への『ノア バランサー』設置作業が必要になります。
しかし『ノア バランサー』設置の際に、ひとつ問題が発生する事がわかりました。」

「それはどのようなことでしょう。」
「『ノア バランサー』の設置によって、大きなマナの流れを発生させるということは

その周辺に眠る全てのマナも活性化させてしまうことになります。
それは大地にとっては、大きな消耗に過ぎません。 大地が自己防衛反応として
マナの精霊を召喚し、活性化を進める元凶『ノア バランサー』を破壊しにかかると
考えられます。」

「用件はわかりました…

設置の際には、ある程度の護衛が必要、という事になりますね…
アルケィナでも人員を確保したいところですが、様々な対処ができるために
軍への協力も望みたいところですね。
アクセル様に相談をして、どなたか力になってくれる方を探したいと思います。」


ルーチェは、ミストを通しビスク軍の最高司令官、キールの称号を持つアクセルに協力を打診した。
しかしアクセルは、女王イルミナに繋がるアルケィナの活躍を良くは思わず、街の警備と他国の牽制を理由に
全面的な協力を行うことを拒んだ。
軍からの協力はわずか1名、軍司令官でもあるクレイトスが選ばれた。
アクセルにとっては、疎ましい存在であるクレイトスを、厄介払いする口実として利用しただけであった。

クレイトス

ルーチェ
クレイトス
ルーチェ
アルフレッド
「軍より、今回の作戦協力として派遣されたクレイトスという者です。

アルケミストの方々や、国民に降りかかる危機は、私が全ての盾となり祓ってみせましょう。」

「クレイトス様。 協力を感謝いたします。 イルミナ様、ミスト様に代わって礼をしますわ。」
「様、なんて柄じゃありませんよ。 クレイトスで結構です。」
「そちらも、そこまでかしこまらなくてもいいですわ。 ではクレイトス、よろしくお願いします。」
「『ノア ポイント』『ノア バランサー』の準備も完了しました。あとはお互い頑張りましょう。」

ラスレオ大聖堂では緊急対策班が集まり、今後の作戦の進行をまとめていた。
アルフレッド


クレイトス
ルーチェ
クレイトス
ルーチェ
アルフレッド
「それでは『ノア バランサー』の設置場所については、以上の説明で問題ないですね?

設置後はマナの流れが一定に落ち着くまで、マナの精霊による抵抗が予想されます。
設置作業及び対処については、クレイトスさんにお任せいたします。」

「あぁ、了解した。」
「私は旅人からの協力者に対して、指示をさせていただきます。」
「私たちの帰る場所が無くならぬよう、ビスクの街は任せたぞ。」
「今回は街への被害は特に無いでしょう。安心してもらって結構です。」
「ではクレイトスさん。作戦の進行をお願いします。」


ルーチェ
クレイトス
アルフレッド


ルーチェ
「あなた様、おつかれさまでした。 皆々様も、ありがとうございました。」
「本当にこれで終わりになるのだな? であれば、特に大きな問題も無く良く済んだと言える。」
「皆さんの団結力により、大きなマナの流れが生まれました。

あとは経過を観測するしかありませんが、それは望んだ形として、
皆様に結果を伝えられるでしょう。」

「それでは、今は一次解散として経過を観察していきましょう。

お疲れ様でした。 ラル・ファク、イル・ファッシーナ。」



ルーチェやクレイトス、多くの冒険者の働きにより、ダイアロス全体のマナが大きく流れ始めた……
しかしそれは、一人の男の計画通りに動かされていただけに過ぎなかった………
大きくうねる流れるマナは、全ての力を… 時の力も躍動させる……

マナの流れが生まれ数日… 突如起きた大きな地震により、事態は大きく動き始める…
異変を感じ取ったのは、ミストとルーチェだった。
自然現象としての地震とは違う、マナの乱れ、振動が引き起こす大きな地震だった。
ミスト
ルーチェ
「何事です!? ……… あれはっ!」
「時の流れを感じる……」

ヴァルグリンドの巣穴を中心として震えるマナの振動は、静かに揺れを弱めながら、
時の鎖を切り離しつつあった。
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「全て準備は整った… 人間達の力により、時の流れは取り戻された…」

マナの振動の中心。ヴァルグリンドの巣穴では、外の喧騒とは対極に、静かに時の流れが脈を打つ…
エルアン宮殿の入口に、ローブを纏った一人の男「アルフレッド」が立っていた。
アルフレッド

クレイトス
アルフレッド

クレイトス

アルフレッド
クレイトス
アルフレッド
「まだ完全には解放されていないが… 特に問題は無いな…」

「ほう。 何が問題ないんだ? アルフレッド!お前はここで何をしている。いや、何を企んでいる!」
「……… よく気が付いたな。勘が良いのか、ただの偶然か…

しかし、このような要素も計算済みだ。問題は無い…」

「何があるかわからんのでな。急な異変に対処できるよう、私は付近で待機していたのだ。

そしてこの地震に、遺跡へ向かう貴様の不穏な動き。 単なる偶然さ。」

「くははははは、君は時の立会人だ。 エルアン宮殿の解放、そして私の野望の第一歩のな。」
「………お前は誰だ? ただのアルケィナの一員であった男の行動ではないな。」
「フッ… もう、この身体は必要あるまい。 君たちを誘導するために借りただけだ。

この男に罪はない。」


クレイトスと対峙するアルフレッドの身体が、急に力が抜けたように崩れ落ちる。 しかし、そこに残る存在は、全てを威圧する強力な力を放っていた。
ザハーク
クレイトス

ザハーク
「私はザハーク。 君達の見解では、エルアンの悪しき意思を持つ者。となるかな。」
「貴様がザハーク! 数ヶ月前の火竜神殿の一件で、消滅したと聞いていたが、

しぶとく生き残っていたというわけか。」

「そもそも、精神体でしかない私に生死の概念があるかわからんが、

また君たちの下へ現れたというわけだ。
しかし、こんな会話もこれまでだ。 私はひとり、エルアン宮殿へ向かわせてもらう。
君は早急に報告に行くと良い。
しかし、肉体を持つ君たち人間には、私を追うことは叶わないだろう。」



クレイトスは剣を構え、宙に浮遊するザハークの精神体に斬りかかる。
しかし、実体を持たないザハーク相手には無意味な事であった。
クレイトス
ザハーク

クレイトス
ザハーク


クレイトス
ザハーク
「やはり斬れんか…」
「君達の努力は認めよう。実に感心する。

だからこそ君達の力を借りたのだ。光栄に思うといい。」

「これからどうするつもりなのだ。」
「賢王の居ないエルアン宮殿は私の自由だ。

あそこには、かつての力を取り戻す術が残されている。
私は全てを取り戻し、時を統べる王となるのだ。」

「馬鹿馬鹿しい… 賢王とやらが貴様に愛想を尽かすのも良くわかる。」
「ひとつ教えてやろう、エルアン宮殿の時間凍結は解放された。

時を待てば、君たち人間も足を踏み入れることができるだろう。
その時は持て成そう、エルアン宮殿の主として………」


最後の言葉を残し、暗く輝くザハークの精神体は、マナの流れに乗りエルアン宮殿の扉の先へと消えていった…
クレイトス
「その時は、私が貴様の野望を打ち砕いてみせよう…」


ルーチェ
ミスト
「クレイトス! 今のはっ!」
「ザハーク… ですね…?」

ザハークが去ったエルアン宮殿の入口に、ルーチェとミストが駆けつけていた。
クレイトス
ルーチェ
クレイトス
ルーチェ
「すまん、取り逃がした。 やつはエルアン宮殿に行った。」
「やはり、エルアン宮殿の封印が解かれた、というわけですね………」
「説明は後だ、まずはそこのアルフレッドを。 多分、気を失っているだけだろう。」
「アルフレッド… わかりました。まずは大聖堂に戻り状況を聞きましょう。」

大聖堂に戻り、クレイトスはザハークとのやり取りを説明した。
すべてザハークの思惑通りに進んだ今回の一件は、周囲にいたアルケミスト達の心を重くした。
クレイトス
ルーチェ


クレイトス
ルーチェ
クレイトス
ミスト
「やつが力を取り戻すまでに時間がかかれば、そこに一縷の望みをかけられるはずだ。」
「そうですわね… どんなに焦っても、今はエルアン宮殿が完全に解放されるのを、

待つしかありません。
その後、如何にザハークの野望を止められるかにあると思います。」

「実体を持たない奴を、どのようにすれば止める事ができるか…」
「………」
「ひとつ考えはある… しかし、いまは時が来るのを待とう。」
「あとは神に祈りましょう… ラル・ファク、イル・ファッシーナ…」

時の流れを、人は待つ…
ザハークの野望を止めるため、物語の舞台はエルアン宮殿へと移る………
ザハークが、エルアン宮殿に消え数日…
時間の振動とも感じられた大地の揺れの後、それはハッキリとわかる「ズンッ」と響く重い衝撃が、ダイアロス全土に拡がった。
ルーチェ
ミスト
「ミスト様!」
「えぇ…、ヴァルグリンドの巣穴から、とても大きな気配が感じられます…

エルアン宮殿が、時の流れに解放されたのでしょう。」


その後すぐに、ミスト、ルーチェの所へ研究員からの報告が告げられた。
時の鎖に繋がれ、現世と繋がりを絶たれた古き民の地は、再び時の歩みを始めたのだった。

ラスレオ大聖堂 ───

エルアン宮殿の解放報告の後、大聖堂にはザハークを追うために
開かれたエルアン宮殿へ向かう人員が集められていた。
ルーチェ


クレイトス



ルーチェ
「皆様、エルアン宮殿への道は開かれました。

しかし、むやみに足を踏み入れてはなりませんわ。
慎重に調査を進め、そしてザハークの所在を明らかにいたしましょう。」

「まずは先遣隊と私で、宮殿内部の調査を行う。

文献やアルフレッドの情報、それにザハーク本人の言葉も信じれば、
エルアンを崩壊に導いた何か、そしてエルアンを襲撃した亜人が、
時の流れに復活を果たしているだろう。」

「後発の方々は、補給の準備を整え、内部の安全が確保されましたあとに、進んでくださいませ。

それでは、皆様が無事に帰られることを祈って…
ラル・ファク、イル・ファッシーナ。」



こうして、クレイトスを含むアルケミスト達は、ザハークを追って、エルアン宮殿へと進んでいった。