■Scene.03. マブ神祭■
【 マブ神祭 第一夜 】
マブ教徒たちが一堂に会すなか、オリアクスの嬉々とした声が地下墓地に響き渡る。

「準備はいいかー!
イーゴ(Igo)様より開催の旨を仰せつかった。
今日から3日間、マブ神祭を行う!」

マブを、イーゴを、オリアクスを称える声が、怒号のように発せられた。

信者たちは、ムトゥームの祭壇や各地のソウル・バインダーを介し、邪神へ祈りを捧げてゆく。
…それは、前夜祭で準備したレッドスープを飲み干すという、血塗れた儀式。

「いいぞ、お前たち。ふかい暗闇へ堕ちていくような絶望感を、楽しもうじゃないか…」
高まりゆく闇の気配を感じ、オリアクスは邪悪な笑みを浮かべた。

――やがて、血の礼拝により召喚されたマブの手先が、各地へ襲撃を行い始めた。
昨日までのアンデッドとは比較にならない、純粋な闇の生物が旅人へと襲いかかる。

ビスクではルーチェが、

ネオクではキング オラージュが、

アルビーズの森ではウォルフガングが、

それらを撃退するよう指示を出す。

一方、どこへいってもアンデッドに囲まれるようになったユンは、オリアクスの隣に寄り添って、じっとしていた。

記憶は取り戻したかったが、外へでかけるのが怖くなってしまったのだ。

「お前も俺たちの仲間なら、ゾンビごときを恐れるんじゃない!…やつらは、お前に攻撃なんぞ、してこんだろう?」

オリアクスの言葉に、ユンはうつむいた。

(だって…怖いし、気持ち悪いんだもん……)

「マブ神祭の気配を感じて、待ちきれずにでてきたに過ぎん。お前も礼拝を捧げ、こころを闇に染めろ」

(兄ちゃんのそばなら、きっと大丈夫。怖いことなんか、何もないんだ)

しばらくムトゥームにいよう…ユンはそう、心に決めたのだった。

【 マブ神祭 第二夜 】
血の礼拝が続くムトゥーム地下墓地――。

礼拝の力は闇を揺さぶり、[ミーリム海岸]と[ネオク高原]に、禍々しいマブ神のオブジェクトを打ち立てた。

日が沈むと、オブジェクトから湧き出してくる、マブの手先たち。
強烈な闇の力は、ラスレオ大聖堂やネオク・ラングにまで及び、アンデッド達が町を徘徊しはじめていた。

ビスクではミストを筆頭に、ラル・ファク神への祈りの儀式が始められていた。
ルーチェはその間も、街を守るよう懸命に呼びかけ続ける。

また、ネオク高原でもキングオラージュが民をまとめ、魔物の撃退に尽力していた。
ミクルが取り仕切る竜神への祈りの儀式も、着々と進んでいる。

各地で異変が起こっていることを知ったウォルフガングもまた、闇に屈することの無いよう、森の仲間たちを奮い立たせていた。

一方、ユンは祭壇を磨きに礼拝堂へと向かっていた。
祭の手伝いがしたくて、オリアクスから仕事をもらったのだ。

各地へ祈りを捧げにいっているのか、教徒の姿は見当たらない。
――かわりに、見たことのない小さな背中が目に入った。
自分と同じ子どもに違いない。
ユンは親しげに歩み寄る。

「だぁれ?お祈りしにきたの?」

声をかけると、その人物はゆっくりと振り向いた。
そしてユンの姿を認め――にやりと笑み崩れる。

とたんに、ユンは祭壇に背をむけ、駆け出していた。
ナゼかはわからなかったが、逃げなければいけない。そう、頭が警告を発していた。

口の中がカラカラで、胸が締め付けられるように苦しい。

(僕、あの人のコト…知ってる?
…誰?…誰っ?)
(コワイ、コワイ…でも、何で…?)
(何で僕、逃げてるの…? あのヒトは、誰?)

ユンは混乱を抑えきないまま、オリアクスの元へと戻った。

「兄ちゃん、兄ちゃん、あのね、僕……!」

ローブの袖をギュッと掴み、ユンはオリアクスの注意をひく。

しかし、彼は礼拝の指導をするのに忙しく、ちらと彼を見て、

「すまんが、今はかまってやれん」

一言、そう告げただけだった。

…そっと、手を離すユン。

(僕…僕、どうしたらいいんだろう? あのヒトは、誰だったんだろう?
…兄ちゃん、僕ね、なんだかすごくコワイんだ…)

真ん丸い瞳が、みるみる潤んでいく。
――しかし、オリアクスがその涙に気づくことは無かった。

【 マブ神祭 第三夜 】
二晩の祈りの力を得て、ダイアロスを覆う闇はなおも深まってゆく。
祈りの力に呼応するように、[レクスール・ヒルズ]と[アルビーズの森]にも、禍々しいオブジェクトが姿を現した。

どろどろに腐った臓器を引きずり、ビスク中央とランダル洞窟、ネオク・ラングをゾンビが埋める。

夜な夜な繰り返されるマブの手先の襲撃は、強まる一方だった。

この異変の原因を突き止めるため、それぞれの勢力は動き始めていた。

ミストは寝ずに、ラル・ファク神へと祈りを捧げ、キング オラージュは竜神への祈りの儀式に力を入れる。
ウォルフガングも各地へ偵察を送る傍ら、決死の撃退を続けていた。

(魔物を召喚しつづけている禍々しいオブジェクト――[マブズ・スピリット]さえ破壊できれば!)

……しかし、濃い闇の気配に包み込まれたそれは、一切を拒絶していた。

一方、祭だとはしゃいでいたユンは、火が消えたように大人しくなっていた。

ときどきイヤイヤするように頭を振っては、不安そうな目でオリアクスを見つめる。

その様子を気にかけつつも、オリアクスは知らぬ振りを通していた。

(お前は、未来のマブ教徒。
悩みぐらい1人で解決してみせろ…!)

――祭は、今宵で最後。
マブ教徒たちは、我先にと争い、1度でも多く血の礼拝を捧げようと、各地を奔走していた。

■この時進行していたイベント内容■

【 マブ神祭 - 第一夜 】

教祖イーゴ(Igo)より、ついに【マブ神祭】の開催が言い渡されました!

準備しておいたレッド スープを次々に飲み干し、邪神に血の礼拝を捧げるマブ教徒たち。
祭は、三夜に渡る祈りの儀式をもって完成されます。

礼拝を重ねるごとに、ダイアロス全土に膨れ上がる闇の気配……。
血の匂いに引き寄せられたマブの手先が、生者を死へといざないます。